雨がちだった冬が終わりを告げ、フィティアンガは今すばらしい晴天が続いています。ポカポカした日差しを浴びながら人々は“ゴージャス!”とか“ビューティフル!”といった言葉を交し合っています。
今年は冬の最中に、初めて広島の府中町から7人の中学生が3人の先生に付き添われてエヴァの語学研修にやってきました。この子供達は府中町の国際教育プログラムの一環で選ばれた子供達です。フィティアンガでの滞在先は隣りのエーリア・スクールの中高生の家庭でしたが、そのエーリア・スクールの生徒の何人かは今年、京北町との交換留学で9月に日本に行ことになっていたので、皆、日本への関心が高く、また生徒同士が同年代ということもあって和気藹々とした交流となりました。
とは言っても日本とニュージーランドでは生活環境や習慣が全く違いますから、なにもかも初めての経験で7人の生徒たちは時に戸惑ったりや驚いたりしたことでしょう。
今年、府中町の生徒を受け入れた高校生の1人、ウイリアム君は学校からスクールバスで20分のファームに住んでいます。彼の両親はそこで“ホーム・キル”という仕事をしていますが、この“ホーム・キル”というのは家庭用に食肉加工をするところで、ニュージーランドでは一般的な仕事です。牧畜の国ニュージーランドでは自分のファームで飼っている牛や豚や羊を家庭の食用にすることは日常的で、私の家でも食べ盛りの子供がいた時には年に1頭は飼っていた牛や豚をつぶして、ホーム・キルでステーキ用、ロースト用、ひき肉、ハム、ベーコン、ソーセイジなどを作ってもらって、大きな冷凍庫に保管したものでした。
ですからウイリアム君のファームでは大きな納屋に肉加工処理場をもっていてお父さんは毎日そこで仕事をしています。もちろんウイリアム君もお父さんの仕事を手伝いますから、彼の生活は日本の子供達には想像できないものです。今年初めて日本人中学生を引き受けるにあたって、ウイリアム君のお母さんが「日本の子供達に私達の生活が受け入れられるでしょうか」と聞いてきました。 「もちろん! 日本の子供達はその違いを経験しに来るのですよ」と私は答えました。
ウイリアム君の家にステイした中学生は最初は驚いたことと思います。でも10日間なんの問題もなく、毎日、山道を20分スクールバスに揺られて元気に登校していました。
短い滞在で子供達が体験できるニュージーランドの生活はほんの一時にしかすぎませんが、私はいつも子供達の柔軟な順応性に感心します。
私の3人の子供たちもこちらに13年住むうちに今はすっかりニュージーランド人になってしまったようです。なんといってもホーム・キルの肉で育っていますから、彼らにとって自分で育てた肉を食するのに何の抵抗もありません。
“手をかけて育てた肉は美味しい”と教えられ、自分で子豚を育て、最後には自分で処理するという経験もしましたが、そこで得たものは“必要以上に殺さない”“感謝して食べる”ということでしょうか。
“百聞は一見にしかず”の通り、若い子供達にとって体験教育は本当に大切だと私は常日ごろから実感していますが、嬉しいことにここニュージーランドの生活にはまだまだ子供達に必要な沢山の体験教育の場があるのです。
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