戦後の高度成長期以来、日本の家庭には長いこと父親不在が続いてきた。望むと望まないにかかわらず父親は仕事一筋、家事や育児、子供のしつけや教育は完全に母親まかせの分業社会だ。日本での私の結婚生活もごたぶんにもれなかった。だからニュージーランドに移り住んでも子供たちにとってその生活はこれまで通りで、相変わらず母親を中心に続いていった。
しかしその母親が再婚した。そして子供たちにとってはいやもおうなく、その相手の男が移り住んできたのだ。当時、私たちは10エーカーの農場に母子住んでいたのだが、そこに義父になる男が移り住んできた。それはまさに青天の霹靂、私達母子にとって驚きと戸惑いの生活の始まりだった。
長い間、私を中心に回ってきた母系社会型の我が家に、早くに母親を亡くしたため父親に育てられ、子供の時から狩猟で鍛えられた父系社会型の男が入ってきたのだ。その上その男は体格も大きく力も強く何といっても存在感がある。3人の子供たちはおおいに戸惑ったが、特に拒否反応を示したのはその時12歳だった長男だった。続きを読む