狩が大好きな義父さんは独身時代からいつも猟犬を飼っていた。犬種はきまってイングリッシュ・スプリング・スパニエルという耳が長くて中毛の中型犬だ。私達が結婚した時、ベンはもういなくてガスがいた。ガスは活動的でどちらかというとがさつで粗野なタイプ。それに比べてベンは好奇心旺盛で、人の心をつかむのがうまく、犬嫌いの人にも人気があったそうだ。
義父さんと犬の関係は完全にご主人様と忠実な家来の関係だ。ガスは義父さんがいるところでは私や子供達の命令をきかない。ひたすら義父さんをみつめて将軍様の指示を待つ。
狩に連れて行くと義父さんはきまった言葉で犬に指示を出す。「ゲット・イン・ビハインド 」は後ろについて歩け。狩猟中に犬が先に出るとすかさずこれを言う。するとガスは忠実に義父さんの3歩うしろをついて歩く。そして義父さんが獲物を撃つと颯爽と飛び出し、回収作業にあたる。義父さんは「ブリング・イット・ヒア 」と場所を指定し、ガスはひたすら集め回る。そのたびに義父さんは「グッド・ボーイ」といって励ます。ガスは状況がどうであれ銃声に反応して飛び出し、走り回ったが、ベンはいつも義父さんとアウンの呼吸で働いたと言う。ただ優秀だっただけに主人への期待も大きく、義父さんが撃ち損ねると、プイと怒ってしばらく姿をけしてしまったそうだ。続きを読む