飛翔する子供達
ご存知のようにニュージーランドは南半球にある。だから北半球にある日本とはすべてが反対で2月は真夏、日本の8月に当たる。そして12月半ばから1月末まで続いた夏休みが終わると、2月のはじめにニュージーランドの小、中、高等学校は新学期を迎える。ちなみに1年は4学期制で、各学期は約10週間。学期末ごとに2週間の休みがあり、12月半ばに学年が終了するという教育システムだ。また、ニュージーランドの高校は9年生から13年生の5年間で、それは日本の中2から高3にあたる。
そんなわけで去年からこの1月末まで私の学校EVAKONAで高校入学準備コースを受けていた子供達も2月から隣のマーキュリー・ベイ高校のそれぞれの学年に編入して行った。
今年のEVAの卒業生は年齢に応じて10年生と12年生に入ったが、去年の卒業組みは13年生に進級した。すでに留学3年目を迎える13年生組みはニュージーランドの高校生活にもすっかり馴染んでいて余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)だが、今年の新編入組みもなかなか落ち着いている。新しい制服姿も身について、親代わりに世話をしているEVAKONAのスタッフ一同も誇らしい気持ちになる。彼らはEVAで1年から半年の英語研修を受けたのだが、その間は英語だけでなく、すでに高校11年生のレベルの数教科を勉強しニュージーランド文部省認定の単位を取得している。だから編入しても勉強にはそれほど不安が無いというわけだ。そして 月曜日から木曜日の放課後にEVAKONAで受ける補習授業も彼らの安心要因の一つだろう。
嬉しいことに今年はEVAKONAの卒業生の3人もが隣の高校でマリン・アカデミーのコースをとった。それはニュージーランドの高校の中でもここマーキューリー・ベイでしか受けられない特別のコースで、美しい海岸に囲まれたフィティアンガの地の利を生かし、実技としてはスキューバーダイビングの国際免許を取り、1年間、幅広く海の事を学ぶのだ。このコースでは海洋資源についても学び、カヌーを習い、海洋救助訓練なども体験し、海軍基地を訪問したり、魚介料理法まで習うというバラエティーに富んだ内容だ。毎週の金曜日がこのコースの日で、その日は一般教科の勉強を免除されるが、毎週受け損ねた授業はもちろん自分で取り戻していかなければならない。それでもEVAKONAの3人組みは前向きで、金曜日になるとウエットスーツに身を包み、ニュージーランドの学生たちと共に嬉々として紺碧の海に出向いていく。頼もしい限りだ。
それだけではない今年はEVAKONAから行った子供達はみんなやる気満々だ。13年生恒例のエドモンド・ヒラリー卿(ヒマラヤ初登頂のニュー=ジーランド人登山家)がスポンサーするOPC競技にも全員参加する。マーキュリー・ベイ高校のチームとして北島のルアペフ山に行って、5日間、ニュージーランド各地から集まった他の高校チームと野外でのサバイバル能力を競い合うのだ。そこでは全員でテント生活をし、地図とコンパスを使って山道を踏破したり、川をカヌーで下ったりとアドベンチャーが繰り広げられる。
そしてまたニュージーランドの誇る10日間の帆船体験教育「スピリッツ・オブ・ニュージーランド」にも今年は2人が参加することに決まった。一人は5月、もう一人は7月に出発する。これはニュージーランド中から40人の高校生が集まって大型帆船スピリッツ・オブ・ニュージーランドで近海を航海するという旅だが、航海中、高校生はチームに分かれて航海から炊事まですべてを任される。船酔いを克服し、寝食を共にして航海した10日後、40人のチーム・スピリッツは最高潮に達し、どの子も船を降りたがらない。EVAKONAの二人もきっと素晴らしい体験をすることだろう。
さて、この2月の半ばの日曜日、地元の航空クラブがヤング・イーグルズ(子供航空クラブ)のためにグライダー体験デーを催した。大人は有料で試乗できるということで私も参加した。その日は晴れ渡った青空のすばらしい夏の快晴で、クラブに属する10歳から16さいまでの若い鷲たち(ヤング・イーグルズ)が
10人ほど集まっていた。その中には女の子もいる。みんな飛行機が大好きで、将来ボーイング727のパイロットになることを夢見ている子供もいる。彼らは毎月2回クラブのセスナで飛行し、操縦桿を握っているので、この日も大人の指導の下でグライダーを操縦した。そして子供達はグライダーを引っ張るセスナ機にも毎回交代で乗り込み、グライダーが下りてくればファーム用の4輪バイクで駆けつけグライダーを引っ張ってくる仕事も交代でこなしていた。この日の私の初めてのグライダー体験は素晴らしかった。エンジンの無い飛行機で空を飛ぶのはまさに鳥になった心境だ。グライダーは驚くほど自在に飛び回る。私のグライダー機のパイロットは18、9歳ぐらいにしか見えない若い青年だったが、それでも彼は5年のグライダー経験を持ち、自己最長滞空記録5時間半というベテランだ。お陰で私は心から安心して飛行を楽しむことができた。
ニュージーランドでは子供達がこうして海に空に山にと飛び出していくチャンスがたくさん与えられている。そしてその機会は留学生にも均等に与えられているのだ。まさに「21世紀の人材教育」の原型がここにはある。
マクリーンえり子
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