フィティアンガのファームライフ
今、私の家の庭ではイチジクが真っ盛りです。まだそれほど大きくもない木ですが、イチジクの実をたわわにつけています。実の大きさは大きいもので直径5センチぐらい、よく太っていて、木で熟したものはこの上もなく甘くてとろけるようです。私は毎日ざるをもってその日に熟れた実をもぎます。この熟れた実は鳥たちにとってもおいしいご馳走なので、私は鳥に先を越されないよう頑張りますが、木の高い方はさすがに鳥にはかないません。
ニュージーランドはかつて鳥の楽園だったというだけに、今でも鳥の数と種類が豊富で、日本にはいない鳥もたくさんいます。私の家の庭にも毎日色々やってきますが、尾羽が扇のようになった小鳥ファンテールやカワセミ、グレーのサギがくることもあり、私たちの目を楽しませてくれます。また、家の牧草地には数年前からトサカの赤いきれいな雄の雉が住んでいて、毎年、時期がくると奥さんと子供を連れて歩き回っています。そして時に野鴨の親子も庭先にやってきます。用意したパンのみみを投げてやると親子で争うようにして食べ、食べ終わると連帯を組んで帰っていきます。
またある朝、起きてカーテンを開けてみると、朝露にぬれた牧草地一面にカモメの群れが休んでいました。ここは海岸に近いのでよく海鳥もやってくるのです。草地で休んでいるカモメは牧草を食べるわけではなく、むしろそれが落とすフンは肥料なるので良いんだと夫はいいます。それに対して野生の七面鳥は牧場主にとっては困り者です。繁殖力が強く群れをなして牧草を荒らすので、夫の弟のファームでも毎年7月になると野生の七面鳥狩りをします。
その日は夫のエディもかり出され、友人も何人かライフルをもって弟のファームに集まります。七面鳥の群れを見つけると猟師たちは丘の斜面や物陰からこっそり近づきライフルを構えます。そして弟の合図とともに、一斉にライフルを発射し、猟は瞬く間に終わります。その後、猟師たちはしとめた七面鳥を集めて回りますが、それは多い時で3,40羽にもなることもあります。それからは女、子供も総出で鳥の羽むしりです。まず大きなバケツに熱湯を用意して、七面鳥をつけます。そうすると羽がむしりやすくなるからです。羽をむしられた鳥は男たちがよく切れるナイフでさばいていきます。首と足をちょん切り、内臓をだすと、何と店で売っている七面鳥の丸焼き用と同じになります。そうしてできた鳥は皆で分け、ミッド・サマー・クリスマスの七面鳥のディナーとなるわけです。私はその内の1,2羽を冷凍して12月の本当のクリスマス用にも取っておくことがあります。牧草をたっぷり食べて育った野生の七面鳥は市販の物と味が少し違い、また鶏よりこくがありまさに野性味があるというのでしょうか。美味しいものです。
そのほかの鳥はというと、フィティアンガにもハトやスズメ、ウズラやツバメなど日本でもよくみる鳥もいますし、また鷹などもよくみかけます。でもこのあたりではあの日本の都会で見かけるしぶとそうな黒いカラスだけは見かけません。
もちろんここの鳥たちの間にも強弱の関係はあるのでしょうが、一見ニュージーランドの鳥たちは豊かな緑と大きな空間の中でゆったりと共存しているようにもみえます。そしてまた蛇の全くいないニュージーランドでは鳥たちの天敵といえば各家庭にいる飼い猫と季節によって繰り出す猟師たちだけなのかもしれませんね。
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