キーウィ-ハズバンドの楽しみ
ワイタンギ・デイの今日、夫のエディは友達のバスターと彼の自家用機に乗って南島のアシュバートンで行われる航空ショーに出かけていった。バスターの飛行機は“グラスエアー”と呼ばれる2人乗りの小型飛行機でセスナ機よりもずっと早いスピードマシンだ。彼が6年かかって自作したもので、最後の2年間はエディも手伝ってついに去年仕上がったばかりだ。スマートな白のボディにグリーンのラインをあしらったとても洒落た飛行機で、フィティアンガからゆうに千キロはあろうかというアシュバートンまで3時間強で行ってしまう。
出発までの1ヶ月間、ナビゲーター役のエディは航空地図を広げては航路の予習に油断がなかった。今回はあえて機械に頼らず地形から割り出していこうという計画だったからだ。そして天候のチェックもぬかりなく、出発寸前にはインターネットで各地の風力、風向きもチェックした。飛行機の最終点検をすませ、無事に“グラスエアー”に乗り込んだ二人は満足そうな笑顔で出発していった。
夫がこうして仕事の合い間に趣味に没頭することを一般にニュージーランドの妻達は快く受け入れているようだ。そして自分も一緒に夫の趣味に付き合うことも多い。イギリス人と結婚しすでに30年以上もニュージーランドに住んでいる私の日本人の友人の場合も、ご主人はともかく海が好き、陸上より船上で暮らしたいと言うくらいだ。ヨットのデザインを仕事とし、自分でもこれまでいくつかヨットを自作した。それに対し、友人の方は都会育ちで、泳げないし、極度の船酔い症でもある。それでもその彼女が今では勇敢にもほとんどの航海につきあっている。
彼らは10年程前に“フラーイング・カーペット(空飛ぶジュウタン)”という独特の三艘船を完成して、夫婦と息子2人の4人で日本に向かった。そのご主人は「航海は自分が子供にしてやれる最大の教育だ」といったそうで、その後4年間にわたったが、貴重な経験を経てニュージーランドの学校に戻った彼らの子供達は他の子供たちに遅れることもなく、むしろ優秀な成績で学校を終えた。友人にしてもその航海の体験はその後の彼女の生活観を大きく変えたという。
私もこの“フラーイングカーペット”が大好きで、夏になるとよく長期の航海に連れて行ってもらった。この船は最先端の機械を使わず、海図を見ながら行路を決めていく。そして風向きと風力を最大に利用して進むため、航海中はキャプテンの指示に従って乗組員全員が協力して帆の上げ下ろしや舵をとる。美しいビーチにつくと、重い錨をおろし、錨を上げる時はキャプテンの独特の掛け声にあわせ皆で力をあわせる。私は行く先々で釣りを楽しみ、夕食に新鮮な魚を提供する係りになる。嵐の日には島陰に避難し、船倉で本を読んだりおしゃべりしたり、夜光虫をみながらの夜間航海もまた楽しい。航海中は風呂もシャワーもないが自然と少ない水で清潔を保つ方法を学び、いたって快適だ。時に立ち寄った島でお湯の沸く川があると聞くと行って野天風呂を浴びる贅沢にも恵まれる。
私はニュージーランドに来て以来、夫や友人のご主人を通して自分ではありえなかった世界が広がったと思っている。大型オートバイを愛する夫エディと共にある時はバイクの後ろにすわって北島、南島と旅をする。それはまた飛行機とも船とも違う醍醐味だ。ニュージーランドには50歳以上にならなければ正会員になれないオートバイのクラブがあり、バイキーとはいってもヘルメットを取るとどのカップルも白髪だったりするのだ。
ちなみにそのクラブのモットーは 「恥をさらして年取をとろう!」私はそのモットーがとても気に入っている。
「続フィティアンガ便り」はエヴァのホームページ www.evakona.jp にも載っています。
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