鴨猟のシーズン到来
今年も鴨猟のシーズンがやってきました。ニュージーランドでは毎年5月の第1土曜日に鴨猟が解禁となり、その後6週間続きます。
初日の土曜日、私の夫エディも朝5時に起きてまだ暗い中を車で30分ほどの所にある弟のファームに出かけていきました。そこで待っていたのは弟のジョーと彼の娘のエステルとセラです。2人はまだ16歳と14歳ですが、鴨猟に参加するのは初めてではなく、最近、銃の腕前も上がってきています。
朝の6時半、まだ薄暗い中を迷彩服に身を固め、ショットガンを抱えた4人は猟犬サムを連れて出発しました。狩場は隣人の500エーカーのファームです。鴨をおびき寄せる為、前日から木で作ったおとりの鴨をいくつか仕掛けておいたので、その地点まで来ると皆は藪にかくれて待ちます。ニュージーランドでは鴨は飛んでいるのを撃たなければいけないというルールがあるので、鴨の群れが飛んで来ると、一行は身を潜め、群れが上空に来るまで待ちます。撃つ時は一瞬で、一斉に打たれた鴨が次々と墜落するとこんどは猟犬サムの大活躍です。彼は嬉々として藪の中や水中に落ちた鴨を拾い集めます。そうやってその日は1日中、ハンターたちと猟犬サムはアウンの呼吸で活躍し、1日で60羽ほどの野鴨を持って帰ってきました。
さあ、いつもはそれからがまた一仕事です。七面鳥の時と同じで、仕留めた鴨を丸ごと熱いお湯に漬けてから羽をむしります。鴨は七面鳥と違って羽の中にさらにダウン羽毛があるので、ジョーの奥さんイボンは時にそのダウンだけ別に貯めておいて後でクッションや枕を作ったりしていました。でも今年は数がたくさんなので、羽はむしらずジョーとエディは狩猟ナイフで上手に胸肉だけを切り取りました。
鴨肉は濃い赤身の肉で多少癖があり、脂気がなく、肉質はどちらかと言うとパサパサしています。それでベーコンと一緒に低めのオーブンで長い時間をかけて丸焼きにしたりしますが、何と言っても純粋の天然物ですからいつでもかならず若鶏あたるというわけにもいかず、時には歯ごたえのあるローストディナーと相成ります。また、ある時には肉に隠れていた小さな鉛の玉が口の中で発見されることもあり、うっかり噛んで歯をいためたなどという話もあります。それでも5月の鴨はニュージーランド人にとってまさに旬の味覚、“今年も鴨料理のディナーに来ませんか”を声をかけると友人たちは喜んでやってきます。
今年、ジョーの奥さんイボンはこの鴨肉を使って、3種類の料理法をためしてみました。鴨の胸肉をオレンジの汁とキーウイ-フルーツとにんにくバターにそれぞれ漬けてみたのです。そして数時間後にベーコンで包んでオーブンで焼いてみました。皆で試食した結果、オレンジの汁につけたものが一番美味しいということで全員一致しました。オレンジジュースによって肉質もやわらかくなり、味もマイルドになります。そういえば“鴨肉の何とか風オレンジソース”などという気取ったメニューがフランス料理にもあったような覚えがありますが、こうしてみるとなんだこんな庶民的なものだったのかと言う気もしてきます。
また先日、私の学校エヴァの生徒たちは科学のドット先生と牛乳の勉強をした後でニュージーランドの新鮮なクリームを使ってのバター、チーズ作りを体験しました。そしてそれらを作った後にできるバターミルクでスコーンを焼きました。その手作りのバターやチーズといっしょに食べるバターミルクのスコーンは美味しくて皆はとてもハッピーでした。
野鴨を料理したり、バターを作ったり、バターミルクでケーキを焼いたり・・・、考えてみれば私が昔ヨーロッパやアメリカの物語を読んであこがれていた生活を実は“今”しているのだと私はいまさらながらに気がつきました。ラッキー!
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