こんにちは。校長のマクリーンえり子です。今年2回目の個別教育相談のために3週間ほど日本に滞在し、6月の初めにニュージーランドに戻りました。日本では今回もたくさんの方々とお会いし、個人的な問題から将来に向けての新しい教育チャンスについてなど、たくさんお話しすることができました。
さて、今回の滞在中にテレビのニュースで痛ましい事件が二つ報道されました。一つは50代の引きこもり男性によるスクールバス停での小学生とご父兄の殺傷事件。2人が犠牲となり、18人が怪我をし、犯人はその場で自死しました。もう一つは40代の引きこもりの息子による家庭内暴力が社会的な迷惑に発展するのを恐れた父親による息子殺害。私はこの2つのニュースを暗澹たる思いで聞きました。テレビ報道によると今日本には100万人以上の引きこもりがいるということです。これはニュージーランドの総人口の約25%に当たります。
日本の子供たちの引きこもり現象が顕著になりだしたのは30年前に私がニュージーランドに移り住んだ頃からでしょうか。その頃の若者が今は40代50代になっているはずです。私自身10年以上前になりますが、エバコナで日本からの30代の引きこもりの青年たちを何人かお世話した経験があります。そのどの人も私から見れば能力も可能性も十分にある身体的にも健康な青年たちでした。でも残念なことに彼らには独立心も自己実現の自信も社会性もありませんでした。彼らは長い間家族に守られ、自宅で自分のペースで生活してきたために、依頼心が強く、社会貢献といった観念も持っていませんでした。彼らと話してみて、それぞれが引きこもりに至る様々な原因があったことは分かりましたが、長い間、日本の閉鎖的な家族関係と画一的な日本の教育システムの中に閉じ込められ不満を持ちながらも受け身で生きてきたようでした。「引きこもり」という現象はその結果生まれてきた日本独自の社会現象かもしれません。
英語には「引きこもり」「登校拒否」という言葉はありません。ニュージーランドの社会ではそうした現象が話題になることはなく、人は病気でない限り学校教育を終えたら親の家を出て自活するという考えが定着しています。そしてニュージーランドの学校教育では幼児期から子供に ”Resilience” ということを教えます。この言葉は辞書を引けば「弾力性」とか「反発力」とか訳されていますが、こちらでのその意味は「不屈の魂」とでも言いましょうか、何度失敗しても起き上がる強さ、失敗をバネにして向上する力を意味します。ニュージーランドでは幼児教育から完全な自由遊びをさせ、そこに大人は介入せず小さな失敗や困難を子供に沢山体験させます。そこで自分で考えて失敗や困難を乗り越えていく力を子供につけさせていきます。例えばお友達との喧嘩、自然遊びの中で直面する困難や小さな怪我等、大人がすぐに手を差し伸べてしまうのではなく、まず子供に自分でこれらを乗り越える「経験」をさせるという事が”Resilience”を育むことだと考えています。
そしてニュージーランドでは教師も親も子供が間違いを犯したときにその間違いを注意し修正しますが、その個人の資質を攻撃することはありません。”Restorative” 辞書の直訳では「元に戻す」「再建する」という考えです。社会は若者たちが失敗から学ぶことを知っており、いとわず失敗させ、そこから立ち直るように力づけます。また学校では人と自分の違いを知るように教育され、そのうえで自分の得意を生かして社会貢献することを教えます。
私は今回も個別教育相談を通して、日本の親御さんたちにこうしたニュージーランドのたくまし教育方針の話をして、それぞれの問題を通して子供たちにどう接したらよいかというアドバイスをさせていただきました。
さて、この旅で一人のお母さんから頼もしいエピソードを聞きましたのでご紹介しますね。帰国してくる息子に成田出迎えのことを何度か連絡していたのですが、返事がなかったため、お母さんはその日出迎えに行かなかったそうです。すると成田で母が見つからなかった息子から電話があり「今どこ?」というので「家にいるのよ、だってあなたから返事がなかったから」と言ったそうです。Good! これは子供にマナーを教える親の小さな愛の 鞭ですね。
私は親の過保護は本当の愛ではなく、親のエゴだと思ってます。どうか皆さん考えてみてくださいね。
マクリーンは8月から9月にかけてまた日本に出張します。その際無料教育相談を行いますので、ご興味のある方は https://www.evakona.jp/無料教育相談/ または eriko@evakona.co.nz までお問合せください。
またエバコナの高校準備コースにご興味のある方は以下も御覧ください。
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