2月19日から日本に来ています。
東京で私がいつもお世話になるのは西多摩郡にある親戚の家です。 そこは77歳になる和子さんの家で、和子さんのご主人は18年前に他界され、2人の子供たちもすでに独立しているので、和子さんはいつも大きなお家に一人で暮らしています。 私は毎回、日本に来ると88歳の父と和子さんの家へ泊まりに行きます。父は普段は弟の家族と暮らしているのですが、私は残り少ない父との時間を大切にしたいと思い、和子さんの家にお世話になります。というのはそこには父と私にとっては心地よくて懐かしい昔の日本の生活があるからです。
和子さんの家の周りには70代、80代の人たちが結構住んでいて、そこには助け合いのコミュニティーができています。 和子さんの家の前庭には広い空地が広がっていますが、そこでは2件隣りの家のご主人が有機野菜の栽培をしています。和子さんは土地を使わせてあげるので、季節ごとに取れる野菜は好きな時に好きなだけとって食べていいことになっています。ですから私も滞在中は採り立ての季節の野菜を存分に味わわせていただきます。
こうした新鮮な野菜は近所のあちこちからも届きますから、和子さんの玄関にはいつも泥つき野菜が積まれています。今回も大きな里芋や八つ頭やそば殻の煮物、甘くて柔らかい長ネギはただ焼いただけでもとろけるようでした。初春の味覚のフキノトウとヨモギとブロッコリーも天ぷらにしていただきました。また、私は滞在中に和子さんの懇意にしている美容院にも行くようになりました。美容師の井上さんはもうすぐ70歳ですが、畑に囲まれた自宅の一部を改造してそこで長年美容室をしています。「私と共にお客さんもどんどん高齢になっていくから、車で送迎するのよ」という井上さんは私が予約をすると和子さんの家まで車で迎えに来てくれます。そして理容料金はずーと据え置き。カラーとカットを懇切丁寧にしてくれて5500円しかとりません。もちろん送迎代は無料です。父も和子さんの懇意の床屋さんに行きますが、ここも頼めば父を車で家まで送ってくれます。
和子さんの裏隣りの奥さんはいつも和子さんの庭の草むしりをしてくれ、プランターには季節の花を植えて楽しませてくれますし、横隣りの奥さんもおいしい漬物や珍しい田舎の産物など届けてくれます。また車のない和子さんが必要な時にはタクシーをかって出てくれる人も多々います。 ですから和子さんも常に自分のできることでお返しをすることを忘れません。今回も私の滞在中に和子さんはおいしいアンコを大鍋いっぱい煮て、昔懐かしい茶まんじゅうをたくさん作り、ためておいたきれいなお菓子の空き箱にその茶まんじゅうを詰めて近所に配りました。時にはお赤飯や煮物、野採天などいただいた野菜を調理してお返ししたりもします。
和子さんの日々の食事は野菜が中心で素朴です。朝はみそ汁と納豆を欠かしません。そして驚いのは私の子供のころと同じ瓶入りの牛乳が定期的に朝配達されることです。紙パックに入った牛乳とは味が違うと和子さんは言います。新鮮な季節の野菜によるここでの食事は実に体に優しいと私は感じます。この辺りに元気なお年寄りが多いのもそうした環境だからかもしれません。 今、日本の若い世代はどこにでもあるコンビニ、スーパーをフルに利用して便利な生活を営んでいるようですが、こうした生活に少しでも戻ったら、キレる子供も少なくなるのではと思うのでした。
(和子さんのお家の写真がなくてすみません。先日神戸に行ったときの写真です)
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