こんにちは、エバコナのカース敦子です。今日は私の娘を通して経験したニュージーランドの教育についてお話をしたいと思います。
私の娘は先日6歳になりました。こちらでは5歳のお誕生日から小学校がはじまるので、娘は今年小学2年生です(学校は2月スタートです)。今になっては随分おしゃべりもできるようになってきましたが、娘はもともと言葉の発達が遅く、私は彼女が2-3歳 の頃から他の子供達と少し違うという事に気が付きはじめました。はじめはバイリンガルだから、と思っていたのですが、他のバイリンガルの子供がある程度大人の言葉を理解し、カタコトでお話ができるようになっても、私の娘は言葉の理解がなかなかできず、いつまでも限られた単語、そしてその単語一つずつだけでの会話しかできませんでした。
例えば、4歳頃でもお友達が“Hello Lena(娘の名前)” と言うと、娘はそのままオウム返しに”Hello Lena” と言い返していました。自分の名前を呼んで相手が挨拶をしているのだという認識が全く無いようでした。また、”What’s your name?” 等のシンプルな質問でさえ答えられず、何を聞かれているのか全く理解していませんでした。そんな娘を周りの子どもは面白がって、幼稚園のお友達にからかわれる事も度々あり、それを目撃した時は親として心が痛みました。
そんな中、幼稚園の先生方が娘のためにNZ文部省を通して、言語の専門家によるサポートをお願いしてくれました。ニュージーランドでは、幼稚園や小学校の先生が子供の発達に遅れや問題を感じた時、専門家によるアセスメント(査定)を文部省を通して依頼します。これは当然両親の同意をとった上で行いますが、逆に両親が子供の発達に不安を感じた場合、幼稚園や学校の先生に相談して専門家のアセスメントをお願いすることもできます。そうすると専門家が幼稚園や学校に来て子供のアセスメントを行い、その子に必要な1対1のサポートプログラムを考えてくれます。また、その後必要だと判断されれば大きな病院で専門家チームによる更なる詳しいアセスメントを受ける事もできます。
私の娘は言語の発達が特に遅かったため、大きな病院にて心理学や言語学等の専門家のチームによる詳しいアセスメントも受けました。
当然、親にとって自分の子供が「みんなと違う」「他の子供よりもずっと遅れている」と思う事はとても不安なものです。できれば自分の子供にはみんなと同じ事ができて欲しい、またはみんなよりも優れていて欲しいと願ってしまうのが親心です。しかし、私はこれらの専門家がどの方も皆明るく、前向きに接してくれる事にとても力づけられました。誰も決して子供の遅れを「悪い事」として話す事はなく、それぞれの子供の「違い」を前向きに受け取り、その子供の「個性」として親や子供と接してくれます。そして何よりもその子が自信を持って成長できるように、子供と親をサポートする形で、子供の指導方法を教えてくれるのです。
娘の場合、月に1回程のペースで、言語サポートの専門家が家や幼稚園/小学校に来て1対1のセッションを行ってくれることになりました(1回1‐2時間)。親がその場にいなくても、毎回のセッションの内容を詳しくメモにして送ってくれるので、子供が何を学んでいるのか、また家で行う事のできるサポートについても詳しく知ることができます。またこのメモは、毎回幼稚園の先生や学校の先生等、その子供の教育に関わる全ての人に共有されます。みんなでその子供のサポート・ニーズを理解できるシステムになっています。
例えば最近ですと、娘の場合Whatや Whereの質問の理解がなかなかできなかったため、それらにフォーカスして子供の好きそうなビジュアルを使ったボードゲームを先生が作ってくれ、家でも学校でもそれを練習するようにしてくれました。また、以前幼稚園の時は、主語・動詞・目的語等の語順の理解がなかなかできず、いつも単語だけで話をしていたので、語順をビジュアル的に見て理解できるように、語順を絵カードにして並べて遊ぶカードゲームを先生が作ってくれて、家でも幼稚園でもそれを使って練習しました。
また幼稚園では先生がボキャブラリーの少ない娘のために、様々な遊具や園の設備の写真をとってカードにして娘に見せて、「今日はどれで遊ぶ?」「何をしたい?」と質問し、絵を選ばせてその単語を先生が娘に言ってリピートさせて教えたり等もしてくれました。
娘をどうやってサポートしてあげれば一番良いのか、幼稚園の先生、言語学の先生、親である私がみんなで定期的にミーティングを行い、親である私の意見や不安も毎回きちんと確認して、みんなが納得する一番良いサポートプログラムを一緒に考えて作っていきました。
娘は毎回専門家の先生とのセッションが終わると「よく頑張ったね!」の褒め言葉と共にご褒美のシールがもらえます(笑)。娘はいつも好きなシール選ばせてもらえるのを楽しみにして、セッションのあった日は胸にシールをはってもらってそれを嬉しそうに見せてくれます。
娘はその他にも専門家の先生の推薦で文部省から週に数回、1対1のサポートティーチャーも来てくれています。サポートティーチャーは専門家の先生の指示のもとに様々な楽しい教材を使って言語のサポートをしてくれます。私がいつも感心するのは、これらの先生がいつも「よくできたね」と子供を沢山褒めてくれて、注意力が散漫になったり、質問に答えられなかったりしても絶対にしつこく質問をしたり、できない事を無理にやらせたりして否定的な態度をとらない事です。子供ができなくて戸惑っていると、すぐにスッとその質問から離れて別の方向から質問をしたり、本人ができる事をやらせます。子供に「できない」という意識を持たせないようにしているようです。
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