楽園の環境保護
5月5日から、マーキュリーベイ・エリアスクールは2週間のメイホリデー(秋休み)に入りました。
今、こちらは秋も半ば、日一日と冷え込むようになってきましたが、それでもまだストーブを焚くほどではありませんし、フィティアンガでは真冬でも最低7℃くらいといいますから、冬はそれほど厳しくないようです。
この辺りは今、キウィフルーツの収穫期です。果樹農家では、アルバイトを雇って昼夜収穫に追われています。先日、町の果物屋で初物のキウィフルーツを1kg=1ドル(約90円)で買いました。甘みと酸味が程よくて、味は最高でした。
メイホリデーの第一日目、隣りのビルとパットに誘われて皆で海岸へ行きました。途中の酒屋でポートワインとレモネードを買って、ポカポカ陽気の午後の海岸で楽しみました。シーズンオフでフィティアンガのビーチには人けがありません。
目の前で突然、野鴨の一群が舞い上がり、飛び去りました。
「今朝、6時半ごろ銃声を聞いたかい?今日から鴨猟が解禁なんだ」とビルが言いました。 「ここで鴨猟が出来るの?」と驚いている私に、「おいしいわよ」とパット。
シーズンが来ると鹿狩をしたり、鴨猟をしたり、海で鯛や伊勢海老、アワビを採ったり、フィティアンガの人々にとってそんな事は当たり前、望めばいつでもできるのです。信じられないくらい豊かな自然に恵まれて、まだこんな国があったのかと私は感動するばかりです。
それでも地球規模の環境破壊の影響は、確実にニュージーランドにも及んでいます。 夏場はオゾンホールがこの国の真上に来ることもあって、皮膚がんの率は高く、この周りでもその話をよく聞きます。パットも何年か前に顔の一部にできたがんを手術でとったと聞きました。
しかし、さすがにグリーンピースの国。国民の環境保護への関心はとても高いようです。とくにフィティアンガのあるコロマンデル半島では、この10年間、自然保護をめぐって外国企業と住民の間で大きな争いが続いています。
このコロマンデル半島一帯は、金を多量に含む地質で、そのため、昔から金鉱掘りが盛んです。フィティアンガの隣、クォトゥヌも100年前はイギリス資本で金鉱の町として栄えました。 しかし、金を取り出すために溶かした土には、天然のシアン・鉛・水銀等が含まれており、それらが川や海の流れ込んでクォトゥヌ周辺は汚染され、100年たった今でもまだ飲用不可の川が何本かあると言われています。にもかかわらず、今度は環太平洋の金・銀・銅の採掘権を握ったアメリカや南ア等の大企業が乗り込んできて、より近代的な方法で多量の金を採掘しようと、コロマンデルのあちこちで試掘をしているのです。
一部では、既に本格的に開始しており、山を崩してその大量の土から青酸カリを使う特殊方法で金を採り出しています。その後に出る土はもちろん猛毒。山積みにされ、雨の多いニュージーランドの天候で、あちこちに流出して汚染を広げていきます。 ですから周辺住民の反対運動は真剣です。
クォトゥヌには、この反対運動のリーダーをしているアメリカ人のマークが住んでいます。彼は10年前にこの運動を起こし、今では仲間をコロマンデル半島一帯に広げました。 そして今でも毎回、体をはって金鉱掘り阻止に出かけていきます。
マークは「僕は大国アメリカが、これまで強権を使って各国にしてきたことを恥じている。だからせめてニュージーランドの自然を守るために働きたいんだ」と熱っぽく語ります。
彼とニュージーランドの仲間達は、この10年間、大企業を相手に激しく闘ってきました。そして今、グリーンピースやフィジーなどの近隣の島々と手を結んで運動を広げようとしています。
コメントを残す