Part1.私がニュージーランドを選んだ理由
17年前、私はニュージーランドの語学学校に留学生としてやってきた。当時としては珍しいケースで、子供を3人連れての母子留学だった。
その時は私が1年間の学生ビザを取得し、子供達はその付き添いということで1年間の観光ビザをもらった。最初は子供達を語学学校に通わせようと考えていたのだが、語学学校は大人のみを対象としているということで、母親が語学学校に通い、子供達は現地の小、中学校に通わせたらというアドバイスをもらいそうすることにしたのだ。当時のニュージーランドはまだ公立校に私費留学生を受け入れておらず、11歳、9歳、6歳だった私の3人の子供達は客人として小 学校に受け入れてもらった。
私の場合、留学の第一の目的は子供達の教育だった。
その頃、日本の教育はゆれ始めていて、一方では小学校からの塾通は当たり前、子供を将来的にいい大学に行かせようと有名大学付属幼稚園受験のための幼児用塾なども流行る中で、「窓際のトットちゃん」がベストセラーになり、子供達をもっと伸び伸びと育てたい。もっと体験教育、情操教育をしたいという考えも親たちの間で出始めていた。
私も「トットちゃん組み」で、シュタイナー教育をかじってみたりしながら子供達の幼稚園や小学校生活を体験的に観察し、しばらく悶々としていたのだが、生来の行動派、思い立ったら即実行型の性格が功を奏して、一番下の子が幼稚園の年長になったのを潮にさっそく行動に移したのだった。といっても計画から留学を実行に移すまでに2年かかっている。
なぜニュージーランドを選んだのですか? これはまず最初に聞かれる質問だ。
第一にはやはりニュージーランドが英語圏だったことが上げられる。当時の私にはなんといっても英語は国際語だという認識があった。子供達が日本語と英語の両方を使えるようになれば大きくなってからの活動範囲が広がると考えた。
第二にニュージーランドが日本と同じ位の大きさの島国で自然環境もすごく似ているということ。親子で異文化に挑戦する場合、極端に環境の異なるアメリカやオーストラリアのような大陸文化より国民性が馴染みやすいのではないかと考えたのだ。
第三に先住民マオリと移住していった白人が融合して生活していると理解したこと。アメリカインディアンの悲劇や長い間白豪主義を取っていたオーストラリアのアボリジニの悲惨な状況、南アフリカのアパルトヘイト政策などに比べて、ニュージーランドはマオリ人に白人の教育システムを積極的に導入する一方でマオリ文化の教育も学校教育の中で取り入れていると聞いたのだ。
今となってもこうした私の選択理由は外れていなかったと感じている。3人の子供達は今や2ヶ国語を操り、日本とニュージーランドの両方の文化を理解する。
Part 2 個性の生きる国ニュージーランド
そして私たちがニュージーランドにきてみて実感したことでさらに良かったことはニュージーランド人やニュージーランド文化そのものが多民族からできているということだ。
こちらに来て最初に親しくなった家族はスコットランド人一家だったし、乗馬の先生はオランダ人、子供達の友達もマオリ人はもちろんインド人だったり、ユーゴスビア系だったりいろいろだった。ニュージーランドで生まれ育った子供でもそれぞれが両親や祖父母の代にあちこちから移ってきており、異国人に対しての違和感が日本のようではない。まさに平和な人種の坩堝といえる。
またニュージーランドの自然環境はすばらしい。日本と違って人口が極端に少ないので(日本の40分の一)、まだ豊かな自然がたくさん残っている。私は海辺のリゾート地に住んでいるのだが、町中のビーチで潮干狩りができてしまうのだ。そこではピピというアサリ大の貝がたくさん採れる。そして町の波止場でも鯵などが釣れるし、船で湾を出れば鯛もたくさん獲れる。
旅行をすれば火山があるので温泉もあちこちあるし、水田の風景こそ無いけれど、どこもかしこも緑の牧場が広がり、牛、羊、鹿などがそこではのんびりと草を食んでいる。川には鱒が住み、原生林のような森も各地に広がっている。
そうした自然環境を生かして学校ではアウトドア教育も盛んだ。一般にニュージーランド人はアウトドアが大好きで、スポーツでは国民はこの上も無くラグビーを愛する。家族では日常的にキャンプに行ったり、馬に乗ったり、サーフィンをしたり、トレッキングに行ったり、生活を楽しむことを大事にする。
そうした環境で育った私の子供達も乗馬を楽しんだり、自転車で北島を旅行したり、サーフィンを楽しんだりと今ではすっかりニュージーランド式の生活をしている。
そうやって生活は楽しむのだがニュージ-ランド人は意外とシャイで派手を好まない。日常生活は地に着いていて、女も男もよく働く。さすがに女性参政権が世界で最初に導入された国だけあって女でも男と同じ職に就ける。現在、首相は女性だし、私の働いていた学校でも校長は女性だった。女性の大型ダンプのドライバーなども珍しくない。
またドゥー・イット・ヨアセルフ(自分のことは自分でやる)の国だけあって車の修理から家の修理まで一般に男は器用にそうしたことを自分でやりこなす。
ここには確かに個性が生き、独立心にとんだ生活がある。私がニュージーランド留学を日本人に勧めるポイントはここにある。
留学を考えている人たちよ、最初の一歩は確実に。そして私は心からニュージーランドのような国を勧める。
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