秦 まりえさんがエバコナに来てくれたのは2016年の11月、ニュージーランドの初夏の時期でした。旅行では無い、長期の海外ステイは初めてだったというまりえさん。もともと料理という分野への情熱があり、世界を旅して世界の食文化を経験したいという夢を持っていました。そのため、世界の食文化を学ぶ旅の第一歩としてまずエバコナへの留学を選んでくれました。まりえさんはエバコナの一般英語コースを学習した後、9カ月程WWOOF (World-Wide Opportunities on Organic Farms の略で有機農場で働きたい人が農業体験をできるシステム)をしながらニュージーランドの各地、20か所 で農業体験をしました。はじめて一人での長期海外ステイは全てが新しい体験の連続だったと言います。温暖な気候によってフルーツや野菜が豊富にとれるニュージーランドで様々な美味しい新鮮なフルーツや野菜と出会い、色々な農業スタイルを経験します。ニュージーランドの北にあるFood Forestというファームでは果樹園や野菜だけでなく、きのこの生産や発酵食品の生産等様々な食を体験しました。
ニュージーランドで1年近く過ごした後、日本に帰国したまりえさんは翌年2018年には十カ月間ヨーロッパへと旅立ちます。モロッコ、スペイン、フランス、イタリア、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、スイス、ハンガリー、トルコ等、15ヶ国の国を旅して周りました。モロッコでは砂漠の中で水道も通っていない村にステイし、地元の人と一緒に暮らしてみました。そこで地元の人々が食べる煮込み料理のタジーンと出会います。タジーンは一つの鍋を家族全員が囲み、外側から内側へとみんながパンで綺麗にすくって食べるため、食べ終わった後に鍋が綺麗になるそうです。水の乏しい環境で食器を洗う必要性を最小限に抑えるとても理にかなった料理にまりえさんは感動します。
また北欧ではクオリティーが世界一と言われるデンマークにあるNOMAというレストランにも行くチャンスがありました。そこでは味だけでなく、プレゼンテーション、サービス、内装や雰囲気のクオリティーが高く、レストランツアーを行いキッチンで料理を作る工程も見せる等食の全てをExperience (体験)として売っていることに刺激を受けます。北欧は気候に恵まれず厳しい自然環境で、温暖な国に比べて食材が乏しい国です。しかし、逆にそのようなハンデがあるからこそ、食にとことんこだわり、普通では食べないものを手間をかけて食べられるようにする等、工夫をし、味やサービスへの追求をしている事に学ぶ事が多かったそうです。
またまりえさんはこの旅で今まで食べた中で一番美味しいという食材にも沢山出会います。デンマークのサクランボ、ノルウェーのキノコ、モロッコのオレンジ等それぞれの国や地域の環境や気候にぴったりと合った食材がある事にも改めて気づかされたそうです。
その後、2019年にはオーストラリアを10カ月旅し、美味しい食肉を追求します。オーストラリアでは自然に近い環境で食肉を育てているファームをいくつも訪問したり、野生の肉を色々試したそうです。その中でもワラビーの肉がとても美味しかったそうで、肉もできるだけ野生に近い、自然の中で育ったものが一番美味しいのだということを再発見したそうです。
2020年からはコロナの影響で海外を旅する事ができなくなったため、日本国内で食の旅を続けます。加計呂麻島や西表島に行き、ゲストハウスで家庭菜園やお料理のお手伝いをします。加計呂麻島では琉球のイノシシの肉と出会い、その自然に近い肉のおいしさに感動したそうです。
まりえさん今埼玉県の松伏町で自分のレストランをオープンするべく動きだしています。完全予約制、1日一組だけというレストランだそうで、食材にこだわり丁寧に一品一品作った料理を出し、「食」をExperience (体験)として提供したいそうです。今まで旅先で出会った様々な食材を使い、その一つ一つの食材についてのストーリーもお客様に伝えたいとまりえさんは言います。お店の名前は「ゼロン」、ゼロからワン(1)を作り出すという意味が込められています。今まで世界を旅し、食材から一つの料理を作りだす「食」の魅力と奥深さを体験したまりえさんだからこその名前ではないでしょうか。
これからも旅を続けると話すまりえさん。行けば行くほど沢山の新しい食材との出会いがあり、これからもそんな素材を生かした料理を作りだすために、まりえさんの食の旅はまだまだ続きます。
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