愛美花さんがエバコナの高校準備コースに留学したのは2016年の春でした。一度は日本の高校に入学したものの、その 受験勉強で燃え尽きてしまい、方向性を失い、何のために勉強をしているのか分からなくなってしまったそうです。高校の勉強の先に何があるのか・・その先の目標が分からず、やっている勉強に意味が見いだせなくなり学校に行けなくなってしまいます。そして不登校が長引いて翌年留年が決まった時、お父さんがこれからは英語が大切だからと留学を勧めてくれたそうです。
2016年のエバコナの高校準備コースを経て、2017年2月に高校2年生としてロトルアにあるジョンポールカレッジに入学した愛美花さんはニュージーランドの高校の自由な環境で生き生きと勉強をはじめます。ニュージーランドでは周りの人がみんな明るく、生徒一人一人が「自分は何をしたいのか」「何か好きなのか」という事を常に問われて成長してきているために、みんな自分が何をしたいのかはっきりとしている事にまず驚き、日本との違いを強く感じたそうです。そして、ニュージーランドでは高校生になると全てが選択科目なので、例えば、数学という科目でも、勉強している生徒は自分が好きで選んでいる科目なので皆とても楽しそうに勉強しています。それを見て最初は強いカルチャーショックを受けたそうです。
また、高校ではアートやフォトグラフィー、デジタルデザイン等、美術系の選択教科も豊富で、それを選んで学習することができます。そのような科目はとても自由で自分でテーマを選び、作品集を作って高校単位を取得します。そこで愛美花さんは外国で「外国人」として暮らす自分の「アイデンティティー」というテーマについて作品集を作成したそうです。移民も多いニュージーランドでは様々な国の人々の価値観と日々触れ合うことも多く、それまでは日本の「常識」の中でしか物事を考えられなかったそうですが、このような体験を通して視野が広がり、結果として心も楽になったと言います。外国に住むという事は必ずしもプラスな体験だけでなく、マイナスな体験もありましたが、後で振り返ってみるとその時はマイナスだと思えた体験も今になると自分の人生によく生かされていると気が付く事が多いそうです。
愛美花さんはこのようにニュージーランドの高校では自分自身ととことん向き合い、自分のアイデンティティーについて、自分は何を求めているのか、何を目指しているのかという事を真剣に考えました。そんな中で昔から大好きだったディズニーランドの非日常的な空間が人々の心に与える喜びや楽しさや夢は全てその「建築」によって左右されていると気が付きます。人の気持ちや行動は建築によって左右されるのではないか、愛美花さんはそう考えました。そこで自分も沢山の人の心を元気にさせる「空間」を作ってみたいと願うようになったそうです。
また、日本で学校に行けなくなった経験から、日本の学校とニュージーランドの学校の建築の違いを考えた時、ニュージーランドの学校は平屋が多く、広いスペースに教室があちこちに点在しています。そのため、廊下が外である事も多く、学生たちは教科によって教室を移動するたびに、外の空気を吸う事になります。この自然や天気に触れる時間が心のリフレッシュになって自分の心にもとても良い影響があると愛美花さんは気が付いたそうです。また、このようにクラスがあちこちに点在するお陰で休み時間等も様々な学年の子供たちが自然と交わり触れ合うチャンスがあります。このように建築デザイン/空間デザインというものは人の心と密接な関係があると気がいた愛美花さんは建築家になりたいという強い意思を固めます。
ニュージーランドの高校を卒業後、日本の大学を受験し早稲田大学と名古屋市立大学の建築学科に合格した愛美花さんは、その帰国子女入試では留学を通して積んできた体験が生きて、面接や小論文で「相手に自分の考えをきちんと伝える、自分について話す/自己PRをする」という事がしっかりとできるようになっていたと言います。
今は名古屋市立大学の建築学科で学ぶ愛美花さんですが、将来は建築を通して子供の心の教育に影響を与えられるようなデザインを目指したいと話します。子供たちの心の成長をサポートし、子供たちが生き生きと、そして自分らしさを見出す事のできる空間を建築を通して作りたい。建築と教育というテーマを愛美花さんはこれからも追いかけていきます。
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