私はフィティアンガの2月が大好きだ。1月末に学校の新学期が始まるとともに、それまで町中に溢れかえっていた都会からのホリデイ・メイカーが一挙に去っていくと、海岸も町の店もレストランもカフェも私たち住民のもとに戻ってくる。そして夏はまだ本番、海洋スポーツにはうってつけだ。
毎年、この時期には3日間にわたるスペア・フィッシング(銛釣り)のコンテストが催され、たくさんの人が参加する。大きいものは1メーターを越すキングフィッシュから30センチほどのカウアイまで様々な魚が持ち込まれ、漁獲量や大きさや重さを競い合う。そしてそのコンテストに出された魚はすべて地元のライオンズクラブに寄付され、波止場近くの町の広場で大々的な競り市が開かれるのだ。もちろんその売上金は後でライオンズクラブを通して地域のために使われるので、魚好きの私は毎年行くことにしている。
競というのはとても面白いもので、目指した魚を競い合って値を吊り上げていく時のスリルは楽しくて病み付きになる。今年も私は2日間通い、たくさんの魚を買い込んだ。一昨年までは小さい魚をこわごわ競っていた私だが、去年はじめて勇気を持って1メーター以上のキングフィッシュを競り落として以来自信をつけた。だから今年は初めからキングフィッシュを狙い、1メーター20センチぐらいのものを2匹競り落とした。それぞれ一匹3千円ほどで、日本では考えられない値段だ。その他、鯛やしま鯵、バターフィッシュといわれる白身の魚など全部で15匹ほど買い込んで、私は今年も大満足だった。
さあ、それからが大変。買った魚を家に持ち帰ると、夫が古いドアを利用して
庭の木陰に簡易キッチンを作ってくれた。バケツの水を運び込み、日本で手に入れた出刃包丁を駆使して私は早速魚をさばき始める。イノシシや野鳥をさばくのに慣れている夫も狩猟用のナイフを持ち出して手伝ってくれたが、なんといってもキングフィッシュは大きい。2人がかりでたっぷり2時間はかかったのではないだろうか。でもその日、たくさんの切り身を小分けにして冷凍し終えると、私は1年の収穫を終えた農夫のような充実した気持ちになった。そしてその晩はもちろん刺身三昧。
最近はニュージーランドでもオーストラリア産のコシヒカリが手に入るので、寿司飯にはこれを使う。米酢は高いのでりんご酢だが、慣れてしまえば結構いける。冷凍しておいたのりを出し、キングフィッシュ、鯛、しま鯵、カウアイなどの刺身で手巻き寿司の夕食だ。今ではニュージーランド人の夫もこの日本の味を理解するようになったので、二人でたっぷり楽しんだ。
毎年、この行事が終わると私はなんとなく夏が終わりに近づいたことを感じる。
そして今年は雑事に追われブラックベリーを摘む時期を逸してしまったと今気がついた。たわわに実った庭の桃やプラムもほぼ終わりにに近づき、フィティアンガには秋がもうそこまで来ている。
「続フィティアンガ便り」はエヴァのホームページ www.evakona.jp にも載っています。
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