ロシアとニュージーランド
牧場のあちこちに植えられた柳やポプラの並木もすっかり葉が落ちて、6月のフィティアンガはまさに冬の様相になりました。このところ雨の多い冬型の天気が続いています。とはいってもこのあたりの牧草は1年中緑ですから、冬でも視界から緑が絶える事はありません。今のところ気温もまだそれほど低くなくセーターがいるという程度です。
さて先々週、私は冬のニュージーランドから夏のモスクワに行ってきました。初めて見るモスクワの事情はニュージーランドと違ってそれはそれは興味深いものでした。その中でも驚いたのはモスクワの車事情と住宅事情そして女性の位置です。
モスクワ空港に着いた私にまず群がってきたのは白タクの運転手でした。その勧誘の熱心なこと! それらをなんとか振り切って迎えの車に乗り込み、モスクワ市街に向かいました。市街に入ると道は車で溢れ渋滞です。でも見ればその車の大半がとても古くて埃だらけなのです。日本からの輸入中古車にたよってきたニュージーランドでも大半の人は中古車を乗り回していますし、フィティアンガのような田舎になると砂利道の泥はねで汚れた古い車も多多見かけます。そんな光景は見慣れているはずの私でしたが、首都モスクワでロシア人ドライバーが土ぼこりだらけの古いロシア製の車を駆使して、渋滞だらけの街を押し合うようにして走っていく様はまさに圧巻でした。
そして住宅事情はといえば大都市でも1戸建ての家が普通で、マンションはほとんど無いというニュージーランドに比べ、モスクワ市内では1戸建ては皆無。1920年代、50年代に建てられた古いアパートが軒並みに並び、まさに戦後の日本で発達した団地のようです。
滞在中、私は1920年代に建てられた団地に住むご夫妻をお訪ねする機会を得ました。そのお宅は6畳ぐらいの居間と4畳半ぐらいの寝室が一つ、トイレと小さい台所があり、お風呂はなし、でもそこのお宅では台所の壁に風呂桶が押し付けてありました。アパートによってはまだ共同台所のところもあると聞きました。すでにご隠居のこのご夫妻は多くのモスクワ人の例にもれず郊外に小さなセカンドハウスを持っていてそこで野菜作りをしているそうです。「お金はないけど生活には満足しているわ」と奥さんは陽気に言って、ボルシチ、ピロシキ、
ロシア風魚とナスの料理などの手料理を食べきれないほどご馳走してくださいました。
驚いたことにそのお宅のご主人はまさにキーウィ・ハズバンドで、奥さんをカイガイしく手伝っていましたが、一般にはロシアの女性の地位は今でもまだとても低くいと聞きました。ロシアでは女性の労働条件は悪く、賃金も男性より低くて、失業率の大半が女性です。そしていまだに女性が家を買ったり、銀行融資を受けたりできないといった状況のようです。
それに比べると世界で最初に女性参政権を導入したニュージーランドでは女性の立場は違います。ご存知のように首相も女性、会社でも女性の社長は珍しくありません。ちなみにフィティアンガのマーキューリーベイ・エリア・スクールの校長も女性ですし、バスの運転手やパイロットなどの職業につく女性もよく見かけます。フィティアンガでは奥さんが働き、ご主人が主夫をしている家庭も少なくありません。エヴァの生徒がホームステイしている家庭にも主夫が切り盛りしている家がありますが、家中ピカピカ、料理も美味しく、感心します。考えてみればニュージーランドでは「亭主は丈夫で留守が良い」とか「粗大ごみ」とか「ぬれ落ち葉」とかいった言葉は生まれません。そんな言葉が日本にはあると話すとこちらの女性は驚くばかりです。そんなになったらさっさと離婚するのがこちらの礼儀なのでしょうか・・・
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