1年半ほど前に、私がオスとメスの2匹のウサギを飼い始めたことをお話ししましたね。二匹ともミニロップと言われる種類で、両耳が垂れたかわいいウサギたちです。真白でアンゴラが入ったフワフワのオスのジョージは飼い主にはぐれて、テームズの町でうろうろとしていたところを捕まえられた老ウサギで、我が家に来た時にはすでに去勢もされていました。もう一匹のグレーで短毛のメスは、もらった時はまだ生まれて1年目の若いウサギで、私たちはリリーと名付けました。
最初の半年、私たちはこの2匹を主に室内で飼っていたのですが、ジョージもリリーも退屈するのか、また前歯が伸びないように研ぐためなのか、室内のありとあらゆる電気コードやボール紙を齧って切ってしまうようになりました。そこで夫が庭に小さな運動場を作ってやり、2匹は室内と運動場を出たり入ったりして暮らすようになりました。やはり2匹とも外が大好きで、地面を掘って長いトンネルを作ったりして、外で暮らす時間が長くなっていきました。
そこでまた夫の提案です。「ジョージ―とリリーを解放して、家と庭を自由に出入させてやろう」というのです。それで私たちは庭に面したドアを開けて様子を見ることにしました。我が家の庭は3エーカーあって、野生のウサギも生息しています。ドアを開けてしばらくすると、最初から恐れもなく庭に飛び出したのはリリーでした。そして嬉しそうにあちこち跳ね回って探索し始めました。そのうちジョージも恐る恐る外に出ました。彼は昔、野良うさぎだった経験もあるので、外の世界の厳しさも知っているからでしょう、用心深く、浮かれた様子はありませんでした。それでもその日から手堅く少しずつ探索領域を広げていきました。
今では2匹とも朝ドアを開けてやると出陣して、1日中外で遊び、夜になると家に帰ってくるようになりました。私たちは夕方2匹が家に戻ると必ずご褒美としてバナナや干しぶどうやリンゴなどの好物をあげて、無事の帰宅をほめてやることにしています。
そして9月から10月末にかけて私は日本出張で留守をしていました。久しぶりで帰宅すると、リリーもジョージも、そして意外なことに野ウサギも1匹加わって庭で遊んでいたので驚きました。そして夕方になると居間から庭につながるデッキの下から、なんと子ウサギが飛び出してきたのです。脅かさないようにデッキで静かにしていると次々と出てきて、全部で8匹いることが分かりました。その可愛いこと!その子たちはリリーと遊んでいるの野ウサギがお父さんらしく、8匹ともお父さんのように耳がぴんと立っていて、色も形もお父さんとそっくりです。でも確実にリリーがお母さんらしく、リリーにも懐っこく寄っていきます。子ウサギたちは今でもデッキの下に住んでいますが、最近では少しずつ縄張りを広げ始め、夕方になるとそれぞれがかなり遠くに出かけています。もうすでに自立し始めたようです。
ウサギは6週間ごとに子供を産む事ができるそうで、リリーはすでにまた妊娠をしているようにも見えます。都会育ちの私はほっておいたら庭がウサギだらけになってしまうのではないかと心配したのですが、夫によると庭にも森にも天敵が沢山いるので、この中で生き延びられるのは1,2匹だろうと言います。そういえばこれまでも庭がウサギで溢れたことはなかったことに気づき、自然の中で生きることの厳しさを改めて実感したのでした。
これからもリリーはどんどん子供を産むのかもしれませんが、私たちは子ウサギの誕生を喜びながらも、自然に任せて野生動物たちの生活を見守っていこうと思います。
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