ニュージーランドの幼児教育専門家から学んだ大事な事:
こんにちは。エバコナのカースです。今年もあっという間に年末が近づいてきました。エバコナも明日金曜日12月23日から来年1月7日までお休みに入らせて頂きます。
さて、先日私はニュージーランドの幼児教育の専門家Kimberly Crispの講演会に参加しました。この方は昔ハンガリーのエミー・ピクラーという女医の考案した幼児教育理念に出会い賛同し、何度もハンガリーに行って講習を受けて学んだそうです。また、その後ドイツの「自然から学ぶ」という幼児教育理念にも出会い、大きく影響を受けるようになりそのような理念を元に自然の中での完全なる自由遊びさせるというコンセプトの幼稚園をニュージーランドの北島ネイピアの郊外に設立、現在幼稚園運営と共に執筆活動や一月の半分は全国各地での講演活動を活発に行っているとの事でした。
自然の中での自由遊びの大切さ
今回彼女の講演の中心となったのが6-7歳までの子供を自然の中で完全なる自由遊びをさせる事の効果についての話しでした。自然の中で自由遊びをするという事は当然様々なリスクを伴うものです。しかしこのリスクも含めて子供が自分の力で問題を解決するという環境が子供の脳の発達に大きな影響を与えるそうです。
自然の中で遊ぶと子供はまず自分で遊びを考え出すという事を学びます。これはとても大切なのだそうです。「つまらない」「やる事が無い」「何をすれば良いの?」と言う子供は「大人」にいつも「やる事」「楽しみ」「遊び」を与えて貰う、または大人に言われた事をするという事に慣れている子供なのだそうです。しかしこのような子供は自分で「遊びを考え出す」という創造力が育まれていません。自然の中でリスクを経験しながら自分で問題を解決し、自分で遊びを考えだす経験を沢山してきた子供はクリエィティブに物事を考える力や問題解決能力がつきます。自然は常に変化し、想定外の事が沢山起こります。だから常に新しいアイディア、様々な角度から物事を見たり考えたりする力をつけていないと問題を解決できないのです。このような経験が子供の思考能力を大きく広げてくれるそうです。
彼女が言うにはこの創造力、柔軟な思考力が将来例えばその子供が企業で働いたときに新しい商品の開発アイディアにつながったり、企業のコスト削減のためのアイディアにつながったり、難しい問題を解決する能力へとつながったりするのだそうです。
挫折や失敗から学ばせる
もう一つ彼女の講演会でとても印象に残ったのは子供の教育の中心になるのは「親/大人のあり方/生き方である」というメッセージでした。長年幼児教育に携わってきた彼女の強く懸念を感じているのは近年の子供の家庭教育の変化なのだそうです。そこで彼女は最近彼女の幼稚園であったいくつかの事例を話をしてくれました。
ある女の子がお母さんに買ってもらった大好きなFrozenの水筒を幼稚園に持ってきました。嬉しくて嬉しくて全ての先生に見せて有頂天になっていたそうです。しかしながら、子供なのでしばらくすると大きな悲鳴が聞こえてきてその子が大声で泣いています。遊びに夢中でどこかで水筒を無くしてしまったのだそうです。先生が一緒になって幼稚園の中をあちこちを探し周りましたが見つかりませんでした。でも、彼女はまだ大声で泣いています。皆さんはこの子の親だったらどうするでしょうか?すぐにまた彼女のために新しい水筒を買いに行ってあげるでしょうか?
またある男の子が遊びに熱中していて、おやつの時間に遅れて現れました。他の子供達はもうテーブルのところに座っておやつを待っています。その男の子の大好きなお友達は既に椅子に座っていて、その子の隣には別の子が座っていました。するとその男の子は大声で泣きだします。お友達の隣に座りたかったからです。先生は男の子に空いている席に座るように促しましたが、嫌がって癇癪を起してしまいます。ここで彼のお友達の隣に座っている子を動かしてその男の子をお友達の隣に座らせてあげたり、別の椅子を持ってきて彼をお友達の隣に座らせてあげる事は簡単なのですが、それをするべきでしょうか?(もちろんこの男の子がこの幼稚園に通い始めたばかりだとか、特別な状況の場合はまた対応も違うと思いますが)。
上の例でKimberlyはこのような状況で大人が子供に「残念な事」「悲しい事」「失敗」を経験させてあげる事の重要性を話してくれました。人間の人生は「挫折や失敗」「自分ではどうしようもできない残念な事や悲しい事」が繰り返し起こるものです。小さなときから少しずつ、このような経験をさせて行く事によって子供に根気や根性、困難を乗り越え生きていく力を育んでいくことはとても大切なのだそうです。これは小さな子供の親にとっては大変難しい事だと思います。子供が泣いていたらどうにかしてあげたいのが親心です。しかし、長い目で見たときにそれは自分の子供のためになっているのでしょうか?現在3歳の子供のいる私にとってこれはとても深く考えさせられるお話でした。
ティーンエイジャーが留学で体験できること
私はこの講演会の後、私たちが日々関わっているティーンエイジャーについても色々と考えさせられる事がありました。エバコナに留学してくる子供達は皆ニュージーランドの一般家庭にホームステイをします。これは度々子供達にとってまず始めの大きな試練となります。大人でも他人の家に暮らすという事はとても気を使いますし、窮屈な事が多いのが現実だと思います。それが、多くの場合今まで一度も親元を離れた経験の無い子供達なのですから大変なのは当然ですね。その上、文化や価値観が異なり言葉も通じない環境なのです。
しかしながら、私たちはこの経験は多くの場合子供達の精神的な成長には欠かせないと思っています。なぜならば、他人の家で暮らすという事は自分の親と暮らすよりも厳しい事が多く、自分で考えて行動したり、自分で問題を解決したり、自分で自分の事に責任をとって生活しなければいけない事が沢山あります。例えば毎朝自分で起きて朝食とお弁当を自分で作って学校に行く。田舎で何も無い所で週末自分でやる事を見つける(部屋にこもって一日ゲームやインターネットをするのでは無くて、釣りに行ってみたり、自転車に乗ったり、ビーチに行ってみたり、お友達と料理をしてみたり自分で考えて楽しみを見つける)。そして、困った事があったら何でも親に頼って解決するのでは無くて自分で考え、解決方法を見つける。また自分の親の価値観とは全く違う考え方や価値観の人と暮らすという事は不公平だと感じたり間違いだと感じる事にぶつかる事も多々あると思います。しかし、この経験は子供の視野を大きく広げ、精神的な成長を促します。
私がニュージーランド人の義父から教えられた事
私は14歳の時からニュージーランド人の義理の父親に育てられましたが、それまでの自分の親の考え方や価値観とは全く違う「他人」からある日突然教育されるようになるという経験はそれまでの価値観を覆されてビックリすることが沢山ありました。しかし今痛感するのはそれが自分にとって本当に良い経験だったという事です。その中で心に残っている一つのエピソードをシェアさせてください。
自分の足で立つという経験をさせる
私は12歳の時から乗馬を習わせてもらっていました。こちらでは乗馬は比較的一般的な趣味で田舎では特に皆自分の馬を購入して、乗馬を楽しみます。まず初心者の時は初心者用の小さめの馬(ポニー)を購入して乗馬を学びます。そして、その後レベルが上がるにつれて、もっと大きくて能力のある高価な馬へと買い替えて行くというのが一般的です。私も始めはポ二-で乗馬を学び始めました。16歳くらいの時にもうすこし大きい馬へと買い替える時がきました。すると義理の父は私を呼んで「もうお前はアルバイトもしているのだし、そろそろ自分の趣味は自分のお金でするべき時期が来たと思う。次の馬は自分のお金で買いなさい」と言われました。その時は日本円でも20万円程する馬を自分で買うのかと思ってちょっとビックリしましたが、義理の父は厳しいですし仕方ないと思いました(笑)家は親の方針でお小遣いはもらえない家でしたし、年末に日本にいる父に会いに日本に行かせてもらった際にアルバイトを3つくらいかけもちしお金を貯めて自分の馬を買う事ができました。このような経験は子供にとって大きな達成感と自信につながります。今振り返っても素晴らしい経験だったと思っています。
そして、その後また義理の父の方針で自分の馬の売買は一切自分でやってみなさいと言われました。買う際は馬に詳しい知り合いに一緒に馬を見てもらい値段を交渉しましたが、売る際は新聞に公告を出して、問い合わせてきた人達と値段を含む売買の交渉を自分でします。しかし馬を売る際はまだ経験の無い小さなアジア人の子供です。軽く見られたり騙されたり、値段等の交渉では威圧的になる大人もいました。義理の父は私が交渉に悩んで相談に行くと必ず適格なアドバイスをくれましたが、私が自分でやるようにと距離を置いて見守ってくれました。今思えばそれはきっと難しい事だっただろうと思います。私の母は心配でヤキモキした事もあったようですが(笑)そんな母を義理の父は制して、私に全ての過程を経験させてくれました。そしてある時は交渉の途中である大人が私に食ってかかってきたときには少し離れて見守っていた義理の父がサッと表れて彼らに去るように言ってくれました。人に騙されて悔しく思うという経験も含めて全てが貴重な経験です。今は思春期にこのような経験をさせて貰えた事に感謝しています。
人生は最高の学びの場
十代の時の人生経験は大人へと歩みだそうとしている若者達にとって貴重な人生の学びを得る時期です。「人生は私たちにとって最高の学びの場である」という言葉を聞いた事がありますが、これは真実だと私は思っています。
留学で学ぶ事は決して英語のコミュニケーション能力だけではありません。それよりも、私たちが子供達に一番学んで欲しいのは様々な人生経験であり、「人生を力強く生き抜く力」です。そのために、日本の保護者の方たちには是非この事を理解して頂き、大切なお子さんたちに「旅」をさせて頂きたいと思っています。
最後に皆さまにとって2018年が新しいスタート、素晴らしい年になりますように心からお祈りしております。
エバコナの留学にご興味のある方はエバコナのウェブサイトも是非ご覧ください。
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