明子さんは2011年7月に2人のお子さんを連れてエバコナの親子留学プログラムに参加しました。 上のお子さんをいつかは留学させたいと思っていた明子さん、そんな時に突然、東日本大震災は起きました。東京に住んでいたので地震の被害はありませんでしたが、原発事故の後に、下のお子さんの鼻血が止まらなくなる等の症状が出て、子ども達の健康に強い不安を抱いたことがきっかけとなり、銃規制があって安全面の心配が少なくて自然豊かなニュージーランドに留学を決めたそうです。
ニュージーランドに到着後、当時中学生だった上のお子さんはエバコナの一般英語コースに入学し、そこで少し英語力をつけた後、現地の中学校に入学をし、明子さんとまだ幼稚園児にもならない小さな下のお子さんは、親子で地元のプレイセンターに通いはじめました。 プレイセンターは、外観は日本の児童館のように見えますが、国の補助金を得て、参加する子どもの保護者達が運営及び管理を協働して行っている施設です。単なる遊び場の提供にとどまらず、ニュージーランド独自の幼児教育カリキュラム「テファリキ」の理念を元に、教育的活動を、保護者達自らが、子ども達に施しながら、一緒に学ぶことのできる、ニュージーランド独自の幼児教育施設です。国が定期的に行うテファリキ・ワークショップに参加して学ぶだけでなく、先輩お母さんたちが、新しく子育てをスタートしたお母さんたちにテファリキ理念を、実際の子ども達との遊びを通じて伝え、困りごとのサポートをしたり、お父さんや家族が自分達ができる特技を持ち寄って参加したり、子育支援のコミュニティが自然にできあがっていく拠点にもなっています。
明子さんは、日本で子育てをしていた時に、子どもサークルや子ども会に参加してましたが、それでも、お母さんが子どもを連れて、他の子と遊べる機会が少なく、参加しても毎回どこかよそよそしく、どこか孤独感を感じながら子育てをしていたそうです。子育てを楽しむことができず、子どもに早く幼稚園に行って欲しいと思っていたそうです。 それなのに、ニュージーランドに来て、プレイセンター活動に参加してみると、初日から安心感に包まれ、とてもびっくりしたそうです。言葉も上手くない外国人の子と分け隔てなく遊んでくれるお母さん達に感化され、テファリキを学びながら、プレイセンター活動を存分に楽しんだ明子さん。「子どもと一緒に過ごす短い時間の楽しみ方」「自分が出来ることを遠慮せずにすぐに貢献するフットワーク」「子ども達の意思による完全な自由遊びの必要性」等、自分の子育てに足りなかった事や、自分ができる事に気が付かされたと言います。
その後、東京に戻った明子さんは、日本のプレイセンターに通いました。そこは、ニュージーランドのように国が作った施設ではなく、一般の3人のお母さん達が10年近く前に必要性を感じ、ニュージーランドのプレイセンターの話を聞いて見様見真似で活動を続けていた育児サークルでした。助成金を申請して、独自のテキストを作り、参加者から会費を集めて、建物を借りて行っていました。そこまでしても続ける価値があることの証明だと明子さんはプレイセンターの素晴らしさを再確認したそうです。そして、そこではしっかりとニュージーランドのプレイセンター活動の神髄である子どもたちの「完全な自由遊び」の理念が生かされ、子どもと保護者が共に過ごす時間を楽しみ、保護者同士のつながりや地域の人々の交流と助け合いの場を作るという考え方が生きていたそうです。 そこに来ているお母さん達は、ごく自然に、絵本の読み聞かせを自分以外の子に行ったり、子どもの行動を観察し、遊びを準備はするけれど、よけいな手出しをせず見守り、子ども達は心から自由に遊べていました。みんなで一緒にカレーや豚汁等料理を作って一緒に食事を楽しんだり、持ち寄りでお食事会やピクニックをしたり、いらなくなった絵本や子供服等をみんなが持ち寄って交換したり、韓国人のお母さんによるキムチ作り講座を行ったり、会費で近くの農園を借り、そこで子どもたちとお母さんたちが農家の人に教えてもらいながらみんなで野菜を育てて、収穫したものをみんなで分け合って食べたり、ギターが弾けるお父さんが来て盛り上げてくれたり、来ている人たちみんなが貢献し、助け合い、子どもと一緒に過ごす時間を楽しめる場所になっていました。
自由遊びを通して、子ども達は、自然に他の子ども達とのコミュニケーションスキルやチームワークスキル、忍耐力や集中力等、沢山のスキルを経験から体得していき、大人が子どもと一緒に活動に参加する事で地域の人同士のつながりやネットワークができあがるニュージーランドプレイセンターと同じ安心感と充実感を得る事ができたそうです。 明子さんはニュージーランドでの滞在経験を通して、子育ての意義を確認でき、子どもを観察する目を身につけて帰国でき、日本のプレイセンターにも出会う事ができて、子育ての満足度が何倍にもなったと、喜びを語ってくれました。
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